■作家の石川達三は…
1930(昭和5年)、移民の監督者として「らぷらた丸」でブラジルに渡り、このときの経験を元に、第1回芥川賞受賞作「蒼氓」*を著わしている。http://mainichi.jp/articles/20160208/ddl/k28/040/325000c
*電子化版(第1部)は
http://bungeikan.jp/domestic/detail/53/
(日本ペンクラブ電子文藝館 所収)
、
http://www.ndl.go.jp/brasil/data/R/033/033-001r.html
にある写真からみても、乗船したのが「らぷらた丸」であることは間違いないようなので、昭和5年前後の同船の記録をみると
神戸 ‐サントス
1 S04/09/28-S04/11/13
http://kindai.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/1450262
移民監督 久万俊泰
2 S05/03/15-S05/04/30
http://kindai.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/1450358
移民監督 米増 覺
3 S05/08/23-S05/10/09
http://kindai.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/1450446
移民監督 片山良平
4 S06/01/31-S06/03/19
http://kindai.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/1450489
移民監督 中島重文
なので、4月29日撮影とされる先の写真は、2番目のそれで、サントス入港直前に撮影されたことになる。
ただし、このときの監督は上記のとおり、米増 覺なので、石川は助監督というか監督補という立場(正式には「移民監督助手」)だったのだろう。
■余談ながら…
この時期は、いわば移民監督の「当たり年」ともいえ、船の事務長に監督を委嘱していることも多い一方で、移民業界の著名人も監督を務めている例がある。
神戸出港-サントス着
S04/10/27-S04/12/11
さんとす丸
http://kindai.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/1450275
移民監督 小林美登利@聖州義塾
S05/03/29-S05/05/26
神奈川丸
http://kindai.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/1450366
移民監督 今井修一@植民学校
S05/05/14-6/29
さんとす丸
http://kindai.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/1450393
移民監督 澤柳猛雄@アマゾン興業
■なお…
「移民監督なる仕事」の内容の具体例については辻小太郎「ブラジルの同胞を訪ねて」日伯協会/S05・刊
pp.4~31
が詳しい。