2016年10月21日金曜日

石川達三「蒼氓」


作家の石川達三は…

1930(昭和5年)、移民の監督者として「らぷらた丸」でブラジルに渡り、このときの経験を元に、第1回芥川賞受賞作「蒼氓」*を著わしている。
http://mainichi.jp/articles/20160208/ddl/k28/040/325000c

*電子化版(第1部)は
http://bungeikan.jp/domestic/detail/53/
(日本ペンクラブ電子文藝館 所収)

http://www.ndl.go.jp/brasil/data/R/033/033-001r.html
にある写真からみても、乗船したのが「らぷらた丸」であることは間違いないようなので、昭和5年前後の同船の記録をみると

  神戸   ‐サントス
1 S04/09/28-S04/11/13
  http://kindai.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/1450262
  移民監督 久万俊泰

2 S05/03/15-S05/04/30
  http://kindai.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/1450358 
  移民監督 米増 覺

3 S05/08/23-S05/10/09
  http://kindai.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/1450446
  移民監督 片山良平

4 S06/01/31-S06/03/19
  http://kindai.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/1450489
  移民監督 中島重文

なので、4月29日撮影とされる先の写真は、2番目のそれで、サントス入港直前に撮影されたことになる。

 ただし、このときの監督は上記のとおり、米増 覺なので、石川は助監督というか監督補という立場(正式には「移民監督助手」)だったのだろう。

余談ながら…
 この時期は、いわば移民監督の「当たり年」ともいえ、船の事務長に監督を委嘱していることも多い一方で、移民業界の著名人も監督を務めている例がある。

神戸出港-サントス着

S04/10/27-S04/12/11
さんとす丸
http://kindai.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/1450275
移民監督 小林美登利@聖州義塾

S05/03/29-S05/05/26
神奈川丸
http://kindai.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/1450366
移民監督 今井修一@植民学校

S05/05/14-6/29
さんとす丸
http://kindai.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/1450393
移民監督 澤柳猛雄@アマゾン興業

なお…

「移民監督なる仕事」の内容の具体例については

辻小太郎「ブラジルの同胞を訪ねて」日伯協会/S05・刊
pp.4~31

が詳しい。

0 件のコメント:

コメントを投稿