2016年12月14日水曜日

島崎藤村「南米移民見聞録」

国会図書館の…

デジタルコレクションで

標題の本
http://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/1023252

を見つけました。

これは…

昭和11(1936)年6月、ブェノスアイレスで開催された世界ペンクラブの第14回総会に日本ベンクラブ代表として出席する藤村が、外務省から依頼された、ブラジルでの「在留邦人社会の実情視察、殊に同胞の情操の涵養、思想の啓発等に就いての研究」の報告書にあたるものです。

 昭和11(1936)年7月16日大阪商船の「りおでじゃねいろ丸」
http://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/1451604
で神戸を出港しサントスを経てブェノスアイレスでの大会終了後、10月始めにサントスからブラジルに入り、それから9日間、ブラジル、主としてサンパウロとリオデジャネイロ周辺を視察しています*

http://www.nikkeyshimbun.jp/2016/160824-73colonia.html

■この本の性格上…

当然ながら、そのブラジル視察についての36ページ
http://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/1023252/23
以下の部分が、この本のいわば本体なのですが、むしろ注目されるのは、10ページ、
http://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/1023252/10
の「船中の移民の生活」以下の、文字通り、同船していたブラジルへの移民者たちの観察録の部分で、これは、船中や上陸後の移民者たちの、大作家の筆になる客観的な記録*として貴重なものだと思います。

*もちろん
 移民者による「体験記」は数多く目にするし、

 移民監督側の視点によるものとしては、
 既報の
 辻小太郎の「ブラジルの同胞を訪ねて」(日伯協会/S05・刊)
  [S03/07/25 神戸出港の「備後丸」]
 があり、
 石川達三の「蒼氓」(改造社/S10・刊) や
 その第2・3部にあたる「南海航路」「聲なき民」(新潮社/S23?)
 http://edcutokyo.blogspot.jp/2016/10/blog-post_21.html
  [S05/03/15 神戸出港の「らぷらた丸」]
 も、小説ではあるが、この範疇に入るだろう。

 しかし、第三者の目によるものとしては、

 戦前のものとしては標記の本
  [S11/07/16 神戸出港の「りおでじゃねいろ丸」]
 戦後のものとしては
 相田洋の「航跡」(日本放送出版協会/H15・刊)
  [S34/03/03 横浜出港の「あるぜんちな丸」]
 程度ではないだろうか。

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